“Magic beans, baby. Magic beans.” – バラク・オバマ “A Promised Land”より

洋書で英語学習

私は洋書が好きです。本の内容を楽しむと同時に英語の勉強にもなるからです。しばらく英文を読まない日が続くと、読むスピードが落ちるので、なるべく間を開けずに読み続けるようにしています。ちなみにたまに日本語の本を読むと、ものすごくスラスラ読めて「母国語で読むってこんなに簡単なんだ!」と感動します(笑)

ちなみに時々聞かれるので書いておきますが、私は電子書籍で洋書を読みます。海外で印刷された物理本を日本で買うとなるとどうしても輸送費が含まれた価格になるので高いですよね。電子版の方が断然安いです。デバイスはKindle専用端末を使っています。スマホだとLINEの通知が来たり、ついついSNSやメールをチェックしたくなってしまうのですが、専用端末なら読書に集中できます。わからない単語もKindle内で調べることができますし、気に入った箇所は蛍光ペンみたいにハイライトして後から読み直したりできるのが便利です。Kindleシリーズの中でも一番安くてシンプルなこちらのモデルの2世代前のを使っています。4年以上使い続けていますが特にトラブルもなく快適に使っています。

文字を読む分には全く支障ありませんが、漫画を読む方は解像度の高い上位モデルをおすすめします。また、防水機能もないので、お風呂で読みたい方も上位モデルがおすすめです。

さて、本題です。

今回はバラク・オバマ著『約束の地』(原題: “A Promised Land”)より、当サイトの名前の由来となった箇所をご紹介します。

オバマ元大統領がイリノイ州議会上院議員だった2000年。国政の舞台に活躍の場を広げようと、連邦議会下院議員選挙に出馬しました。結果は、大敗。

夫婦共働きで幼い子ども(長女マリアさんは1998年生まれ。2001年には次女サーシャさんが生まれる)を育てる家庭にあって、ただでさえ家のことを十分にケアする時間のない夫に対し、ミシェル夫人の不満は募るばかり。

選挙に出るには膨大な費用もかかります。

下院議員選挙で敗れた後、家庭のことを考えると国政に再挑戦するなんてとんでもない、という状況でした。

そんな中、ヘルスケアや教育、労働といった政治課題を解決するためには、やはり州議会ではなく、もっと広いオーディエンスへ訴える必要があると考えたオバマ氏。今度はアメリカ合衆国上院議員への出馬を目論みます。

しかしそのためには、ミシェル夫人を説得しなければいけません。もちろん、夫人は大反対。

“If you lose, we’ll be deeper in the hole,” she said. “And what happens if you win? How are we supposed to maintain two households, in Washington and Chicago, when we can barely keep up with one?”

I’d anticipated this. “If I win, hon,” I said, “it will draw national attention. I’ll be the only African American in the Senate. With a higher profile, I can write another book, and it’ll sell a lot of copies, and that will cover the added expenses.”

Michelle let out a sharp laugh. I’d made some money on my first book, but nothing close to what it would take to pay for the expenses I was now talking about incurring. As my wife saw it – as most people would see it, I imagine – an unwritten book was hardly a financial plan.

“In other words,” she said, “you’ve got some magic beans in your pocket. That’s what you’re telling me. You have some magic beans, and you’re going to plant them, and overnight a huge beanstalk is going to grow high into the sky, and you’ll climb up the beanstalk, kill the giant who lives in the clouds, and then bring home a goose that lays golden eggs. Is that it?”

“Something like that,” I said.

Obama, Barack. A Promised Land. Crown, Nov 17, 2020

(筆者訳)

 「もし負けたら、私たちはさらに深い穴に陥るのよ。それに、もし勝ったらどうするの?1世帯ですらまともに維持できてないのに、ワシントンとシカゴで2世帯もどうやって維持しろって言うの?」と彼女は言った。

 これは予想していた。「もし僕が勝ったら、国中で注目される。僕は上院議会で唯一のアフリカ系アメリカ人になるんだ。今より知名度が上がれば、もう一冊本を書ける。そしてたくさん売れるから、それで追加分の出費は賄えるだろう。」と言った。

 ミシェルはけたたましく笑った。私は最初の本でいくらか稼いでいたが、今話しているこれからこうむることになる出費を賄うにはほど遠いものだった。妻が考えたように(ほとんどの人もそうだと思うが)まだ書いてもいない本は、財政計画になりようもなかった。

「つまり、あなたはポケットの中に魔法の豆を持ってるのね。それがあなたの言っていることよ。魔法の豆を持っていて、それを土に埋めて、そして一晩で豆の木が空高くまで成長し、あなたはその豆の木を登って、雲の中に住んでいる巨人を殺して、そして金の卵を生むガチョウを持って帰ってくるのね。そういうことでしょ?」とミシェルは言った。

 「まあそんなとこだね。」と私は答えた。

結局、オバマ氏は2004年のアメリカ合衆国上院議員選挙に出馬し、民主党の予備選挙では得票率53%で指名候補を勝ち取り、共和党候補にも圧勝してイリノイ州選出の上院議員に当選しました。

翌年、上院議員就任式のためにワシントンに滞在していたオバマ夫妻。就任式前夜に著書の編集者から電話を受けます。

2004年の大統領選挙で、民主党候補としてジョン・ケリー氏が選出された民主党党大会で基調演説を行ったオバマ氏。(大変有名なスピーチですので、見たことがある方も多いかと思います。)このスピーチが、オバマ氏の知名度を一気に押し上げ、絶版となっていた著書が再出版され、ベストセラーになっていました。そして、編集者は上院議員就任の祝福とともに、「驚くほどの」高額な前払い金で新しい本の契約を結びたいと、電話してきたのでした。

ちなみに、この時ベストセラーとなっていたのが “Dreams from My Father: A Story of Race and Inheritance” で、新しく契約されて後に出版されたのが “The Audacity of Hope: Thoughts on Reclaiming the American Dream” です。

くだんのスピーチはこちら。何度見てもしびれます。

Obama's 2004 DNC keynote speech

そして、編集者からの電話を切った後、新任上院議員のウェルカムパーティーに夫婦で向かう途中、ふとミシェル夫人が立ち止まります。

“Forgot something?” I asked.

She looked at me and shook her head, incredulous. “I can’t believe you actually pulled this whole thing off. The campaign. The book. All of it.”

I nodded and kissed her forehead. “Magic beans, baby. Magic beans.”

Obama, Barack. A Promised Land. Crown, Nov 17, 2020

(筆者訳)

 「忘れ物?」と私は聞いた。

 彼女は疑うように私を見て首を振った。「信じられない、本当に全てやってのけるなんて。選挙。本。全てよ。」

 私はうなずき、彼女のおでこにキスした。「魔法の豆だよ、ベイビー。魔法の豆だ。」

しびれました。このエピソード自体もしびれますし、文章もすごくうまい。

大統領の多くは退任後、回顧録を出版しますがだいたいゴーストライターを使います。(プロの文筆家ではないので、当然ですね。)しかしオバマ大統領はゴーストライターを使わず、自ら執筆しています。読書家として知られるオバマ大統領。700ページを超える大作(しかもまだ任期の半分しかカバーしておらず、続編が出る予定)にも関わらず、長さを感じさせないのです。まるで映画を見ているかのように、次の展開が気になり、読み進めたくなってしまいます。さすがの文才です。

オバマ大統領ほどのセンスはかけらもありませんが、このブログもいつか何かにつながればいいなという願いを込めて “magic beans” を拝借しました。

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