オバマ元大統領の回顧録『約束の地』が出版された当初、日本の鳩山元首相の描写について物議を醸しました。いったいどのような内容だったのでしょうか。
It had been more than twenty years since I’d traveled to Asia. Our seven-day tour started in Tokyo, where I delivered a speech on the future of the U.S.-Japan alliance and met with Prime Minister Yukio Hatoyama to discuss the economic crisis, North Korea, and the proposed relocation of the U.S. Marine base in Okinawa. A pleasant if awkward fellow, Hatoyama was Japan’s fourth prime minister in less than three years and second since I’d taken office–a symptom of the sclerotic, aimless politics that had plagued Japan for much of the decade. He’d be gone seven months later.
Obama, Barack. A Promised Land. Crown, Nov 17, 2020
(筆者訳)
アジアを訪れるのは20年以上ぶりのことだった。7日間に渡る外遊は東京から始まった。東京では、私は日米同盟の未来についてのスピーチをし、鳩山由紀夫首相と経済危機、北朝鮮、沖縄の米海軍基地の移設案について会談した。鳩山はぎこちなさはあるが愉快な人物で、3年足らずの間で4人目、私が大統領になってから2人目の日本の首相であった。この頻繁な首相交代は、政治が硬直し目的を失った結果であり、日本はその病にここ10年近く苦しめられていた。鳩山はその7ヶ月後、退陣した。
鳩山首相に関する記述はこの1パラグラフのみ。発売当初は鳩山氏に対して “awkward” という表現はいかがなものかと、批判する声がありましたが、他国の首脳の描写や、本全体を通して色々な人やできごとの描写を見るに、なかなか率直で手厳しく感じる表現も多々見られ、特段鳩山氏の人柄を悪く言っている印象は受けませんでした。
それよりも、当時の日本でコロコロと首相が変わる状況、またそれを招いた日本の政治のあり様に対して痛烈に批判的なことが伺えます。よっぽどのこと(例えばJFKの暗殺やウォーターゲート事件によるニクソンの辞職)がない限り、4年間の任期を全うし、さらに最大2期8年在任できる(そしてオバマ氏は実際2期勤め上げた)アメリカ大統領と比較すると、とても不思議な現象に見えるのかもしれません。もちろん国のリーダーが選ばれる仕組み・制度の違いは大前提としてありますが。
とにかく、オバマ大統領にとって鳩山首相は特段印象に残らなかった人物であるようです。実際、このパラグラフに続く一文からもわかります。
A brief visit with Emperor Akihito and Empress Michiko at the Imperial Palace left a more lasting impression.
(筆者訳)
皇居での天皇・皇后両陛下の謁見の方がよっぽど印象に残った。
“a more lasting impression” と、鳩山首相との会談と比較して”より”長く続く印象を持ったと述べています。
次回はこの一文に続く天皇・皇后両陛下や皇居の描写を紹介します。